【大分における博多骨硬派の系譜 朝の静寂を切り裂く、純豚骨の機能美】大分市城原、大在の地に佇む『七萬』。ここは単に美味いラーメンを提供する店ではない。大分という土地に「朝ラー」という新たな食の生態系を根付かせた、エポックメイキングな存在である。午前7時。暖簾をくぐると同時に、高火力で徹底的に攪拌(かくはん)された骨のエキスが、微細な泡となってスープの表面を覆っているのが視界に入る。これぞ高乳化純豚骨の証だ。さっそくスープを一口。ファーストアタックは驚くほど骨太で、髄のシンミリとした旨味が五感を刺激する。しかし、特筆すべきはその「引き算の美学」だ。これだけ高濃度でありながら、酸化した獣臭さや余分な脂の重さが完璧に排除されている。重厚でありながらシルキー、この相反する要素を両立させる緻密な火加減コントロールには、ただ脱帽するしかない。合わせる麺は、博多伝統の低加水・ストレート極細麺。今回はスープの熱量に負けない「バリカタ」を選択。噛み締めた瞬間にパツンと弾ける歯切れの良さが、濃厚なスープを適度に拾い上げ、口内での咀嚼(そしゃく)を至高の快楽へと昇華させる。そして、この探究をコンプリートさせるために不可欠なのが、サイドメニューの「半チャーハン」という名の“難題”だ。配膳された瞬間、その質量に驚かされる。他店の並盛りを遥かに凌駕するボリューム。米一粒一粒に均一に熱と油が回った職人技のパラパラ食感であり、これを口に含み、すかさず七萬のスープを流し込む。米の甘みと豚骨の塩味が融合するこの瞬間こそ、炭水化物シナジーの極致と言える。2024年末に津守へ2号店を展開し、その独自の遺伝子をさらに拡大しつつある七萬。大分のラーメン史を語る上で、この店の一杯は避けては通れない「生きた教材」である。