• 餃子の王将ラーメン(680円)

  • 昔、天下一品の本店(総本店;何故か京の民は総本"山"と呼ぶ者もいる)がまだローカル屋台ラーメンだった時代にいまも総本山がある北白川に固定店を構えたところ、徒歩1分と近くにあった餃子の王将 北白川店は自社ラーメンの売上が極端に落ちた。その時、王将側はその原因に気付いていなかったが、近所に住まう学生バイトが「テンイチ美味いっす。マジっす。アレ作れば儲かるっす。」と言って、コックに無理矢理作らせたのが現在の餃子の王将ラーメンの原型である。
    当時も王将は店舗毎に独自メニューを出しており、総本山の1時間以上かかる行列を待ちきれぬ兄者(70年代後半年は女性がラーメン店に並ぶ事はまだ慣習法により禁じられていた哀しい時代)たちが、「もうめんどいし、今日は2号(王将)にしとくか」と足を運んだため、テンイチの成長に比例して北白川店は客足を取り戻して行った。しかもテンイチくずれのお客さんは必要以上に腹を空かせており、副菜である八宝菜や疲労回復滋養強壮美味い酢豚なども合わせて注文。売上は一転、元に戻るどころか鰻登りに伸長していった。当時この北白川の奇跡を売上ベースで知った王将本部側は、今まで提供していたいわゆる中華そば的醤油ラーメンとは別に、この2号を全国店舗の定番メニューに格上げ。結果、未だテンイチの店舗のない全国津々浦々のエリアに鎮座した王将関東軍により、若干こってり風な2号が「1号」として進出。まるでFラン商学部卒の卒業論文並のマーケティングの勝利として今に至るのである。皆さんがYouTubeなどで違法アップロードされているらしい当時の氷河期世代の若者がコックの腕と脳筋を強力に鍛える王将フードサービスの研修風景を捉えたワイドショーのドキュメントを観て心震えるだけでなく、2号を情熱と工夫で1号に仕立て上げる令和のパワフルな黒字企業に対しもっと感動と敬意を持って接してもいい。社長の最期については究明を待つ。
    そんな社会派ラーメンだが、懐かしく、北区十条では未だに1号として美味しかった。
    ※この物語はどこかフィクションです。