• ノーマル

  • 今回いただいたのは、言わずと知れたロードサイドの名門「ラーメンショップ」、通称“ラーショ”のノーマルラーメン。
    この一杯を目の前にすると、まず感じるのは「安心感」。どの店でも微妙に味が違うのに、どこか共通する“ラーショの香り”。湯気の奥から立ち上るあの豚骨醤油の香ばしさ、背脂の甘い香り、ネギの青さ、それらが混ざり合って、まるで朝の国道沿いに漂う幸福の匂いのようだ。

    そしてまず目に飛び込んでくるのは、どんぶりの縁に刻まれた“ラーメンショップ”の文字。
    これを見ただけで、なぜか妙にホッとする。店ごとにフォントも器の色も微妙に違うのに、どこか懐かしい統一感。まるで「帰ってきたな」と言わんばかりの、ノスタルジックな気分にさせてくれる。

    レンゲを持ち上げると……まずデカい。
    ラーメンショップのレンゲは「スープをすくうため」ではなく「ガッツリ食うため」に設計されているかのようなサイズ感。まるで“これでスープも具も一気にいけ”と言わんばかりの男気を感じる。

    スープをひと口すすると、その印象は意外にも「あっさり」。
    見た目は背脂が浮いてこってりそうに見えるが、口に含むと豚骨の旨みがまろやかに広がり、塩分も程よく、飲みやすい。ラーショ独特の、あの「濃いけど重くない」奇跡のバランス。背脂の甘みが後味をまろやかにしてくれて、思わず何度もレンゲが止まらない。

    麺は家系ラーメンの中でも珍しい細麺タイプ。
    モチモチ感よりもツルリとしたのどごしを重視した中細ストレート麺が、スープとよく絡みつつも、クドさを感じさせない。麺をすすると同時に、豚骨醤油の香りが鼻に抜ける瞬間の幸福感といったら、もはや説明不能。朝でも昼でも夜でも、どの時間に食べてもハマる「中毒性」がここにある。

    トッピングはシンプル。チャーシュー、ほうれん草、ネギ、海苔。
    この4種が「ラーショらしさ」の核心を担っている。

    チャーシューは見た目よりも柔らかく、脂身の甘みがスープと調和して、まるで煮豚のような深みを持つ。スープに浸してからライスと一緒にかき込めば、まさに至福。豚の旨みと醤油の香りがライスに染み、どこか懐かしい“町中華の味”を思い出させてくれる。

    ほうれん草はスープの塩味と相性抜群。
    一見、脇役のようでいて、スープの油分を吸い上げながらも、青菜の爽やかさを残す。このほのかな苦味が、こってりスープを一段引き締めてくれる隠れた名サポート役だ。

    そして忘れてはいけないのが海苔。
    レンゲにほうれん草、チャーシュー、スープ、そしてこの海苔を一緒に乗せて食べる──これぞ“ラーショ式フルコンボ”。
    海苔がスープを吸い込み、醤油と豚骨の香りが口いっぱいに広がる瞬間、思わず心の中でガッツポーズ。半ライスを添えて、そこにスープを軽くかければ、まるで小さな丼ぶり。
    「これがあるからラーショはやめられん」と全国の常連が口を揃えるのも納得の一口だ。

    スープの表面をよく見ると、細かな背脂がキラキラと光り、レンゲで混ぜるたびに香りがふわりと立ち上る。
    豚骨の獣っぽさをほどよく抑え、醤油のキレで整えた絶妙な調合。決して上品ではないが、どこまでも「人間味」がある。毎日食べられる味ではないのに、なぜか「また食べたい」と思ってしまう魔力がある。

    食べ進めるうちにスープの温度が少し下がり、味が変化していくのもまた面白い。最初は香りとキレ、次第に背脂の甘みが主張し始め、最後の方ではスープの塩味と豚骨のコクがまろやかに溶け合う。終盤に差し掛かる頃には、レンゲですくうたびに「もう少しだけ」と自分に言い訳しながら、気づけば完飲。

    食べ終わった後のどんぶりには、うっすらと残る背脂の膜と、満足げなため息。
    「やっぱりラーショだよな」と心の中でつぶやいてしまう。派手さも、流行りもない。それでも、どこか懐かしく、何度でも帰りたくなる。まさに“原点”にして“永遠のローカルヒーロー”。

    ラーメンショップのノーマルラーメンは、シンプルながらも奥深い。
    華やかなトッピングも奇抜なスープもないのに、なぜこんなにも心に残るのか。
    その答えはきっと、「人の暮らしに寄り添う味」だから。
    仕事帰り、休日の昼下がり、ふとした瞬間に恋しくなる。そんな“生活の中のラーメン”が、ここにある。



    つまり──
    ラーメンショップのノーマルラーメンは、毎日食べられる背脂のやさしさ。
    そして、日本の国道に刻まれた庶民の魂の味である。 🍜✨