• ラーメン(チャーシュー入)

  • そのラーメン屋は、昼間は営業していない。と言うか、日中に出向いてもそこに店はない。何故なら《ラーメン ぽん太》は今や全国的にも絶滅危惧種と言える、ガチ屋台のラーメン屋だからである。
    凍てつく夜22時、丸太町通を西へ西へ。京都信用金庫常盤店の下に赤提灯を灯す軽バンが見えたら、それが《ぽん太》だ。荷室が屋台用に改造されており、後部には二つの鍋(恐らくスープと麺茹で用)が設えてある。ボードに書かれたメニューは【ラーメン】(&トッピング違い)のみ。とりあえず初訪なので、チャーシュー麺に該当するであろう《チャーシュー入》をオーダー。ワンオペの大将がテキパキと動き回る。
    丼は割り箸を渡された状態で、直に手渡される。テーブルやスタンドの類は無いので、片手で丼鉢をしっかり支え、伸びる前に啜り切らねばならない。しかし視界は闇鍋状態(画像参照)、そして気温4℃の夜気に指が悴む。下は勿論アスファルト……非常にスリリングな状況で実食開始。
    スープはサラリとした鶏白湯で、意外と骨味が効いておりコクがある。麺は昔ながらのストレート麺で柔らかめ。チャーシューは歯応え、塩気共に強めの豚バラ煮。これはライスが欲しい。斜向かいの《来来亭》でテイクアウトしてこようか(駄目だよ)。
    煌々と照る寒月、濛々と立ち上る湯気。冷え切った躰の芯から沁み渡る、夜鳴きラーメンの熱、油、塩。冬の屋台でしか味わえない、そして今や味わうことさえ難しい抒情的な美味さとラーメン体験が、ひっそりと夜の闇に沈む太秦の道端にある。こいつぁ堪えられん、と冷める前にスープを飲み干し完食。ゴミ箱を見ると、先客の割箸が幾膳も刺さっていた。実は隠れ繁盛店である。