• 味玉中華そば(950円)

  • フランス産のバルバリー鴨、名古屋コーチンを主体に、魚介類や茸類などを加えた塩味の清湯スープ。かえしは不使用で、塩分はイタリア産プロシュート(生ハム)に、フランス産ゲランドの塩で味を調製している。香味油は鶏油。無化調。
    麺は浅草開化楼の細麺。粒子の粗いデュラムファリーナ粉を配合したもので、パツパツした食感だがやや伸びやすい。量は120g。
    チャーシューは厚めの豚バラ肉。柔らかくて美味。上から野生の胡椒ペッパーキャビアを挽いてある。味玉は黄身がゼリー状の半熟。鮮やかな橙色で、旨味が非常に濃厚。具は他に太めのメンマ3本、九条ねぎ。

    非常に不思議な感覚に陥る中華そば。スープは非常に上品で滋味深い。丁寧に出汁を引いた、お吸い物をいただいているかのよう。
    麺を啜ると若干の物足りなさを覚える。それを補うのが仕上げのペッパーキャビア。
    立ち上る香りが、ともすれば単調になりがちなスープのアクセントになっている。
    具はスープの味を壊さないよう、薄い味付けで統一されている。
    さすがに味玉には塩と若干の醤油が使われているが、それも最低限。味の調和はしっかり保たれている。

    これを中華そばと呼んでいいのやら。
    以前、調味料ゼロで話題になったラーメンゼロ(閉店)に通ずるものがある。
    確かに美味しい。限りなく上品で繊細な味。でも、どこか物足りなさを覚える。
    率直に書かせてもらえば、「凄いなと感心こそすれ、美味いなと感動はしない」かな。

    冷たいほうじ茶の用意があるとのことで、〆に飲ませてもらった。加賀の水出しほうじ茶で、うすはりのグラスで提供される。
    色は薄いが、ほうじた茶葉の香り高い美味しいもの。これはお金が取れるほうじ茶。お冷やだけでなく、ぜひ飲んでほしい。

    「中華そば 勝本」「つけそば 神田 勝本」に次ぐ、松村店主が手がける3号店。
    店名は店舗の広さ8.5坪に由来する。中華そばの価格が850円なのも、同様の理由から。
    カウンターには紙製のランチョンマット。れんげと木製の箸が箸置きに揃えて置かれる。右脇にはおしぼり。

    10時20分着で2番目。10時50分に時間を繰り上げて開店。この時点で14人待ち。
    11時11分の退店時は、並びは18人にまで増えていた。カウンター6席のみなので、並ぶ際はお早めに。