• 支那そば(醤油)+煮玉子(950円)

  • 2022年6月3日(金)

    昨夜は仕事帰りに寄り道をして今更ながらこちらの店を初訪問。

    店主は「ラーメン協会」の初代理事長であり、銀座の高級和食店の総料理長から転身したと言う異色の経歴の持ち主です。

    また、こちらは今では当たり前に提供されている「半熟煮玉子」発祥の店としても有名です。

    尚、これほどの名店に未だ訪れていなかった理由は、昔の味を知る複数の知人から味が落ちたと聞かされていたからです(汗)

    19時23分に到着すると、広い店内には先客が僅か2名のみの状況です。

    先ずは「支那そば(醤油)」を注文し、尚且つ名物である「煮玉子」も追加すると、待つ事7分ほどで待望のラーメンが到着です。

    醤油スープには油分と共に刻みネギが浮いていて、緻密に縮れた細麺の上にはチャーシュー、メンマ、味玉、カイワレ、海苔が乗っています。

    先ずはスープを飲んでみると、穏やかでいて輪郭を帯びた醤油の風味や塩味と共に、淡麗でいて重層的な出汁の味わいが口の中に広がります。

    出汁は恐らく鶏や豚の動物系に魚介節や昆布と思われますが、淡白でありながらも凡ゆる旨味が均整を保つ事で見事な一体感を与えています。

    尚、スープを飲むと仄かな甘味が余韻として舌に残るものの、自ら味わう限りでは昆布と共に微かな加糖から来る甘味である様な気がします。

    一方、タレは軽めに効きつつも無垢な醤油の風味を保っていて、それが出汁の旨味と相乗する事で味わいに何気ない厚みを生み出しています。

    至って素朴でいてインパクトに欠ける味わいではあるものの、何時の間にか惹き付けられる朧げなフックを孕んだ味わいである様に感じます。

    次に麺を食べてみると、低加水寄りの細麺が適度な硬さに茹でられていて、噛み締めるとプツリとした歯切れと共に鮮明な小麦の甘味を感じます。

    そして、縮れた細麺にはスープが存分に絡み込み、豊潤な小麦の甘味と穏やかなスープの旨味が重なる事で味わいに更なる厚みが生み出されます。

    次にチャーシューを食べてみると、赤身の豊富な豚肩ロースの煮豚が適度な厚みにスライスされています。

    肉質は弾力と共に潤いを保っていて、噛み締めると適度に染みた醤油ダレの風味が背景となって赤身の旨味や脂身の甘味が舌に明確に伝わります。

    次に味玉を食べてみると、半熟の黄身は流れ出さない程度に固まっていて、微かに甘味を帯びた和出汁が黄身の旨味を鮮明に際立ている印象です。

    食べ終えた感想ですが、特徴の見当たらない至って平凡な味わいではあるものの、私には食べるに連れて引き込まれる不思議な魅力を感じました。

    前職が和食の巨匠と聞いて複雑な味を想像してはいたものの、寧ろ小細工を施す事なく単純な構成でバランスを極めた味わいである様に感じます。

    正直言って葛西まで通わせるほどの明快な魅力ではないものの、自宅から近ければつい通ってしまいそうなさり気ない魅力を孕んだ味わいでした。

    尚、味が落ちた否かは初訪の私には判断する術が無いものの、仮に味が落ちているならば嘗ては相当素晴らしい味わいであった事が想像出来ます。

    改めて訪れる機会があれば、次回はメニューを見て気になっていた「海老塩ワンタンそば」を是非試してみたいと思います。

    ご馳走さまでした。