昨夜は1軒目を出てから急遽予定を変更してこちらの店を初訪問。
こちらは青森のフレンチの名店である「Kashu」がプロデュースしたラーメン店です。
尚、当初の目当ては某新店でしたが、到着したら開店は来週月曜との張り紙が貼られていました(涙)
私は他業種がプロデュースする店には殆ど興味が無いものの、このまま神保町を去るのも勿体無いと感じた事からこちらを訪れた次第です。
18時57分に到着すると、店内には先客が誰も見当たらない状況です。
先ずは「青森拉麺黒」の食券を購入し、席に着いて食券を渡すと5分ほどでラーメンが到着です。
透明な醤油スープには鶏油の油膜が浮いていて、細麺の上にはチャーシュー、南部煎餅、スライス紫玉ネギ、長切りのネギが乗っています。
先ずはスープを飲んでみると、膨よかでいて角の無い醤油の風味や塩味と共に、シンプルでいてクリアな出汁の旨味が口の中に広がります。
蘊蓄を見ると出汁は鶏のみとの説明ですが、丸鶏から出たと思しき肉質のエキスが雑味を伴う事なく極めて丁寧に抽出されている印象です。
ただ、味わいの主体は出汁の旨味と言うよりも鶏油のコクや甘味で占めれている様な気がします。
一方、タレは魚醤に似た風味や独特な甘味を帯びている反面、塩角が過度に削がれる事で塩味の引っ掛かりに欠如している感が否めません。
次に麺を食べてみると、低加水寄りの細麺が若干硬めに茹でられていて、粘りを帯びた歯触りと共に幾分無垢寄りな小麦の風味を感じます。
そして、細麺にはスープと共に鶏油が存分に絡み込み、噛み締めると鶏油のコクが重なる事で小麦の甘味が飛躍的に膨らみを増す印象です。
スープを飲む限りでは些か物足りない味わいに感じたものの、麺を啜ると塩角不足が出汁や鶏油の旨味で巧みに補われている様に感じます。
次にチャーシューを食べてみると、低温調理で幾分レア気味に仕上げられた豚肩ロースや鶏胸肉が何れも薄め寄りにスライスされています。
豚肩ロースはレアならではの瑞々しさを帯びていて、尚且つ味付けが控えめである事から赤身の旨味や脂身の甘味が舌に鮮明に伝わります。
一方、鶏胸肉は生肉の繊維質から来るザックリとした食感を与えていて、尚且つ塩味と粗挽き黒胡椒のみでシンプルに味付けされている事から鶏胸肉の淡白な旨味が舌に素直に映し出されます。
次に南部煎餅を食べてみると、緻密な生地の与える小麦感が存分に染みたスープの旨味と重なる事で想像以上に重厚な味わいを生み出します。
食べ終えた感想ですが、私個人的には異業種がプロデュースしたラーメンの典型例である様に感じます。
フレンチの技法を駆使する事で旨味が丁寧に引き出されている反面、ラーメンの文法からは若干ながら逸脱している感が否めませんでした。
百々のつまり、この味をプロデュースした方自身がラーメンをあまり食べ歩いていない事が伝わる味わいと言うのが私の偽らざる所感です。
そして、この様な印象が大半を占める事から、私個人的には異業種のプロデュース店にはあまり興味が湧かないと言うのが正直な所です。
尚、不本意な理由で訪問し低評価するのは筋が通らない事から、今回のレビューでは総合及び味の評価を敢えて差し控えたいと思います。
ご馳走さまでした。