吉祥院の人気店【極だん】の突然の閉店は、とても残念な知らせだった。不幸な偶然や事情が重なった結果、というのがまたやるせない。理由の一つが軍鶏の取引業者の廃業だという。軍鶏の祖先は闘鶏用の鶏であり、その名前は伝来元であるタイ国の古い呼び方「シャム(Siam)」に由来する。その極端に攻撃的な性質から大量飼育が難しく(雄同士が殺し合いを始めるため、つがいで育てる必要があるらしい)、故に扱う業者も少なく、故に希少だ。一つの取引先が潰えたからと行って、簡単に供給元を再確保できるものではない。食材と看板への愛着と拘りゆえの、苦渋の選択なのだろう。
恐らく最後になろうオーダーは、つけ麺を選んだ。ついでに瓶ビール(赤星)も注文し、ちびちび呑りながら待つ。
軍鶏ならではの一癖と深みのあるつけダレ、ライ麦入りの風味豊かな麺、ふんわりとジューシーなレアチャーシュー、店主のセンスとスキルの光る盛り付け。これで食べ修めかと思うと寂しいし、独創性のある店が灯りが消えるのは惜しい。繁く通えなかったのが悔やまれる。いつまでも、あると思うな親と麺屋。