朝になれば顔も名も忘れそうな行きずりの女を獣(けもの)のように抱き、獣(けだもの)のように棄てるかの如く、愛も拘りも無く、ただ感情と欲のままラーメンを貪りたくなる夜が年に一度くらいある。そんな時には近所の来来亭に行く。大概、猛烈に苛々している。実際、その夜も仕事の上がりが遅れ、予定していた麺屋での夕餉を逃していた。
22時過ぎても無駄に元気な店員が接客してくれる。どうしてこういう店にはイントネーションが独特な店員が必ず一人か二人いるのだろう。何だがガソリンスタンドみたいだなぁ……とほろ酔いの頭で「こってりラーメンのがっつりBセット、硬めの濃いめ」と告げる(背脂の市場流通量が減っているとかで、アブラを増せなかった。有料でいいから増したかったんだが)。
まず、炒飯が着丼。それをラーメンの到着を待たずしてカッ喰らう。次いでラーメンと唐揚げ。マヨネーズをぶち込んだような濁り方をしたスープとストレート麺。味は正直よく解らない、と言うかどうでもいい。ただ、悪くない。旨い。途中、唐揚げを持て余したのでライス(中)を注文。さらに衝動的に焼き餃子も追加。22時にラーメン、炒飯、唐揚げ、餃子……間違いなく破滅に向かっている。お値段、締めて1,910円。例のつけ麺よりもさらに高いし躰にも悪い……が、後悔はない。納得してこのザマになったのだ、むしろ清々しい。