• 雲丹蕎麦(1500円)

  • 人々は海に出て多くのものを得た。富や名声を、、、そのために人々は多くの命を落としたくさんの涙を流しただろう。私は思っていたなぜそんなもののためになによりも尊いものを失う危険を承知で海に出たのだろうかと、、、
    まさにこの一杯のためだと!!
    雲丹は外敵を寄せ付けない針と黒よりも黒いもはや漆黒、禍々しい見た目をしている。食べ物とはとても思えず、その身は外見とは異なる黄色。黒と黄色は生き物が生まれ持っている警戒色、その身を食すことは危険を意味する。私は思っていたなぜそんなリスクを負ってまで雲丹を食べたのか、、、
    まさにこの一杯のためだと!!
    もはや優しさしか感じ得ないスープの上に浮かぶ薔薇チャーシューに鎮座しますは前述した雲丹である。
    「不問位である」とつぶやく雲丹は満更ではない様子であった。
    ラーメンを食す、、、いや正確にはラーメンではなかったのかもしれない、ではなにを食したのか、今の私にはわからない。
    でも、食べているとき私は確かに幸せであった。麺が、雲丹が、スープが、すべてがこの目の前にいる店主、いやシェフによりギリギリのバランスを保ちながら私の舌に、いや脳内に旨味を、いや幸せを運んできた。「おいしいかい?」と脳内に問われた経験はあったがこのラーメン、いや旨味は「幸せってなんだろうね、今君は幸せかい?隣にいる人は奥さん?奥さんのことは幸せにできてるかい?今日、外は寒いの?」とめちゃくちゃ話しかけてきた。あまりの情報量に気付けば私は完食、完飲し、店内に流れるJazzと旨味とのセッションに涙を流し、幸せを噛み締めたのであった。そしてあまりの旨さに私の口が言葉を紡いだ。
    お  い じぃ~よぉ〜