• ラーメン(800円)

  • このラーメンは、人生最上の一杯なのではないか?

    そんな疑念が頭をよぎったのは、肉と脂身が7:3の黄金比を成す豚を噛み締めたその時だった。ありえない。豚に関しては近隣2店舗と比べても大したことは無いと思っていたのに。だが、肉らしい繊維質な噛みごたえと柔らかさを兼ね備えたその豚は、紛うことなき神豚であった。しかしその豚に酔いしれる間もなく野菜をかき分け麺を引きずり出し口へ運ぶ。

    ウマウマ、バカウマ〜!

    先程までは疑念でしかなかったものが、確信へと変わった。そして、「美味い」以外の語彙は脳内から姿を消した。サークルの例会を休んだ罪悪感も、食べきれないのではないかという不安ももうどこにもなかった。僕はひたすらに食べた。獲物を屠る肉食獣のように、僕の世界には悦びしか存在していなかった。

    気づくと目の前にあったのは全てを食い尽くされた一杯のどんぶりとスープだけだった。だが僕はまだ満たされていなかった。スープに浮かぶ脂、ヤサイをすくっては喰らう。しかし何かが舌をヒリヒリと痛めつける。ニンニクだ。このニンニクだけは一杯の中で唯一調和を乱していた。僕は次からはニンニク抜きでコールしようと決めた。そして己が二郎系で一番好きな店が夢を語れであることを知った。