• 漢方牛肉麺

  • 日本橋駅近くに「神戸牛ラーメン」なるモノを売りにする、しかし明らかにインバ狙い&地雷臭漂う店があった(=過去形)。と言うのもこの店、気付けば潰れていたのだ。いつ通りかかってもガラガラの店内に「長くはないな」と思ってはいたが、ここまで早いとは。あの《マシマシらーめん 豚になれ!》に匹敵するスピード閉店ではないか。

    で、その跡地に入ったのが、一件何を売っているのか判断できない実に奇妙な店だった。
    7色に変色するLEDで妖しく光る看板には店名ではなくイラスト、と言うか落書きが描かれている。決して揶揄ではない。『ドラゴンボール』に影響された中学生男子がノートに描いたようなタッチの、正真正銘の落書き。そしてそれらはどうも、4コマ漫画のように4つの場面で構成されているようだった。

    ①『ラーメン発見伝』のラーメンハゲこと芹沢みたいな人物(以下:芹沢)が訪日。
    ②上半身裸の芹沢、丼鉢と箸を手に滝行?
    ③道着姿の芹沢、スーパーサイヤ人化(毛量変わらず)。
    ④厨房服姿の芹沢、麺を手延べしている。

    ……???

    最期のコマの脇に「暁面」「東方神面」の文字があるが、どっちが店名なのだろうか。いや、そもそも店名なのだろうか。店内を覗いてみると、カウンターで芹沢の実写(鈴木京香=ドラマ版の万倍似ている。しかし何で漫画を実写化する際にキャラの性別や年齢を変えたがる奴というのは、一定数居るのだろうか……閑話休題)もといイラストのモデルであろう人物が生地を手延べして製麺していた。どうも蘭州ラーメンの店らしい。
    意を決して入店してみると、片言で芹沢に「イラシャイマセ」と言われた。店員もほぼほぼ全員中華系。食券制ではないが先払いで、その際に他の蘭州ラーメン店同様に麺の太さをチョイスする。とりあえず基本味であろう漢方牛肉麺を細麺でオーダー。インバ(特に中華系)をメインの客層に据えているのだろうか、値段は総じてやや高め(しかし客は自分しかいなかった)。
    店内はクラブかバーのようにダーク&ゴージャスな造り。味変用のラー油と黒酢がお洒落な硝子の器に入れられてカウンターに置かれている。
    着丼。牛骨清湯に薄切りの牛肉、大根、ラー油とパクチー。所謂王道の蘭州ラーメンであり、見た目では他店……それこそ道路を挟んだ向かいにある《伊蘭香》との違いがあまりないように映る。それでも半割れの味玉がデフォで入っているのは珍しい、気がする。
    新派蘭州ラーメンを謳っているようで、スープには漢方=薬膳的な要素が加わっているらしい。確かにスープに牛骨や野菜とは異なる、スパイス感と清涼感を仄かに感じる、気がする。他所との差異が判るほど蘭州ラーメンに親しんでいないので「よくわかんね」というのが正直な所。
    それでも、他メニューを食べに再訪しても良いかなとは思える程度には悪くはなかった。