西荻窪。駅前から幾多もの誘惑に打ち勝って、最高の味に出会いに来た。
これから目の当たりにする感動を予感させるかのように、作り込まれた世界観が待ち構えている。食べる前から始まっているんだ。
入口とは打って変わって落ち着いた白の店内は、ラーメン屋とは思えないほど広く開放的な配置。通された席に着いて注文制で〜す。
着丼。目の前に現れたその姿は、いま目に映る何よりもシンプル。
深い黒色のスープの表面には黄金色の膜が一枚平らに張られている。
スープを一口含むと、丸い鶏の味がキャンディを舐めるかのように端からほどけていく。
そして思い出す。そうだった。こんな味が好きだったんだ。
適温よりもほんのひと目盛りだけ温かいスープによると、黒い見た目よりも穏やかな醤油と鶏との間にギャップが少なく、過度でない丁度の美味しさを、急がず焦らず楽しむ余裕をくれているらしい。
ストレートでハリがあるながら、スープに馴染んだ麺は、味も香りも引き連れてくれる良い質感。
ラーメンというファストフードの一ジャンルでありながら、レストランで過ごすような充実した時間の移ろいを感じられる一杯でした。
さて、細かく振り返ってみたい。
まず目についたのはネギ。刻んだうえでさらに細かく刻まれている。あえてはじめはスープに溶け出さないようにまとめられており、食べ進めていくごとに徐々に拡散されていく設計がすごい。
ネギが馴染んで味が深くなってきた頃に三つ葉をかじると口内がスッとクリアになる。
チャーシュー3種も美味しい。吊るし焼きの薫香も適度で、通常のチャーシューはサクッとした歯ごたえで楽しく、鶏チャーシューは柔らかくジューシーで今まで食べた鶏で一番うまい。なんてこった。
そしてメンマ。なんでしょうこのメンマは。噛めば噛むほど味と香りが滲み出して、経験のない感覚を味わえる。
実は替え玉も頼んでいて、タレが絡めてある替え玉だけでももちろん美味しいものの、スープにつけて食べることで替え玉でしか味わえないもうひと味を楽しめた。ずっとおいしい。なんだこれは。
具材の一つ一つに抜かりのないラーメンもまだ多くない今日において、そのうえで具材の一つ一つの調和までとれた素晴らしい一杯。
このレベルの味にはそうそうありつけない、ここに感動がありました。
しかし、こんなに美味しいラーメンが並びなくふらっと入れる。こんなことってあるのか。
誘惑と感動だらけの西荻窪。また訪れたいまちの筆頭になった。