「大分市大手町にて70年の歴史を紡いだ『清陽軒 本店』が、今月5月25日をもってその暖簾を下ろす。大分の食文化における一つの『時代空間の消失』を意味している。かつて久留米の地から暖簾分けされ、大分の地で独自に『深化』を遂げたそのラーメンは、現代の主流である濃厚ドロドロ系とんこつとは一線を画す。一見すると透き通るような淡麗スープ。しかしひと口含むと、丁寧な炊き出しによって抽出された豚骨の純粋な旨味と、優しくもキリッと効いた塩気が立体的な輪郭となって舌の上で躍動する。麺の上に鎮座するアイコニックな輪切りゆで卵、そして大分らしく海苔の上からあらかじめ振られた絶妙な胡椒のアクセント。これらは単なるトッピングではなく、スープの旨味を最大限に引き締めるための完璧な構造設計だ。昭和・平成・令和と、激動の時代の中で頑なに守り抜かれてきたこの『いにしえ系』の極み。これほどまでに胃に優しく、なおかつ記憶の深層に強烈に焼き付くスープには二度と出会えないだろう。一つの偉大な『食の文化財』が終わりを迎えるその日まで、私はこの奇跡の一杯を最後の一滴まで解剖するように味わい、我が記憶に永久保存する。70年間、素晴らしい探究の歴史をありがとうございました。」
ラーメンどんぶり大事にします🍜