店内に入る前から香る獣のような臭いが、街のブロック一体を包み込んでいた。何故だろう、人間はこの臭いに惹かれてしまう生き物なのだ。避けて通ろう、そんな風に思っていた私だったが、目を開けると店の中のテーブルに座って注文をしていたのだ。獣がずっと鼻にごびりつき、店内のにぎわいからか獣の遠吠えのように聞こえた。ラーメンが到着し、すぐに啜ろうとするが、獣がなかなか食べさせてくれないのだ。威嚇するかのような臭いは私を遠ざけた。それでもやっと走って走って走って逃げ切り口の中に入れたのだが、臭すぎて獣を振り切れずにいた。そんな攻防を繰り返しやっと獣が、豚骨に変わり、それが深みに変わっていったのだ。私は頭の中で何度も感謝し、店を出た。